マイクロフィルムのお話(その2)
前回、簡単なメリット・デメリットのお話をしましたが、今回は本題である「なぜいまマイクロフィルムなの?」という疑問について、業界経験者の目線からお話します。私がもっとも不安視する点として「これから何年先までマイクロフィルムがあるの?」ということです。お客様に対して安易にマイクロ化を提案して、はたしてその仕様で何年間大丈夫なの?・・・と。
これはあまり知られていないことでしょうが、すでにマイクロフィルム用の撮影カメラは生産されていません。つまり、ほとんどのマイクロ業者は数十年前のカメラを騙し騙し使用しているというのが現状で、いつ壊れても不思議ではありません。もちろん部品等の購入もできなければメンテナンスができる専門業者もほぼありません。極端に言えば、カメラが壊れた時が撤退という可能性だって否定できません。
それでお客様は納得されますか?
ぶっちゃけて言うと、いまマイクロ化をお客様に提案する理由としては業務仕様に制限を設けるという意味合いが大きいのも事実です。つまり、マイクロフィルムを仕様書に盛り込むことができれば請負業者が、かなり限定されるということが狙いでもあるわけです。もちろん、すべての仕様においてそうであるとは言い切れませんが・・・おそらく、現在マイクロ化を推奨している営業マンも自社のカメラが壊れた時点から「これからはスキャニングの時代ですよ」と言わざるを得ないのではないでしょうか(笑)
また、材料についても国内メーカーは生産から撤退していますし、かろうじて海外でフィルムと現像機は生産されているようですが、肝心のカメラを生産しないということは・・・今後のマイクロフィルムの需要は激減するとみているのでしょう。(断言はできませんが)
当然ながら技術者においても時代が時代だけにマイクロフィルムの知識や技能を持っている若い世代の人間は少ないのも不安材料といえます。
というわけで、ここまでの話をまとめると・・・
お客様の認識として、未だマイクロフィルムの信頼度は高いようです。しかしながら、これまで述べたようにマイクロフィルムを作成するための「設備・材料・人材」これらがどうしても不安要素となります。
令和元年を迎えた現代において、言うなればマイクロフィルムの時代は終わりを告げる時代にきているといっても過言ではないでしょう。
マイクロフィルムにおける最大のメリットであった「法的証拠能力」についても、現在は「電子帳簿保存法」など時代に合った法律も制定され、規制も緩和されてきました。これからもどんどん緩和されていくはずです。このような時代になってもなお、マイクロフィルムを望みますか?というのが私の考えであり、重要なことは『10年後、20年後を見据えた記録管理を考える必要があるのではないか?』ということです。そう考えた場合「なぜいまマイクロフィルムなの?」に行きつくわけです。
私が思うに今後、マイクロフィルムについて考えるべきことは「これまで蓄積されたマイクロフィルムをどう活かすのか?」であり、これからマイクロフィルムを導入するメリットはあまりないように思います。
以上、色々と書きましたがこれはあくまで、マイクロフィルムから現在のスキャニング業務に携わってきた30年以上の経験をもとに『個人としての見解』を書いたまでです。
読まれた方がどう考えるかはお任せします(笑)
2019年07月19日 13:15