ゼークトの組織論
今回のお話は知っている方も多いかと思いますがゼークトの組織論というお話で、これはドイツの軍人であったハンス・フォン・ゼークトという人が唱えた組織論のことで、組織(会社)に所属するのを辞めた私なんかにはあまり関係ない話なのですが、すごく興味深い内容だったので少し書いてみようかなと思います。
実はこのゼークトという軍人が考える組織論として、人間は4つのタイプに分けられるそうなのです。そして、その分類ごとに与える役割を変えることで組織がうまく成り立つ、というような話です。
で、その4つのタイプとは
1.有能な怠け者タイプ
このタイプは面倒なことが嫌いで楽をしたがる人間なので、とにかく無駄を省いた“合理化”を常に追求するタイプで、例えば時間のかかる入力処理業務なんかはボタン一つで簡単に“自動化”してしまうなど、限られた時間を最も有効に使うことができるタイプと言えそうです。こういう思考から、自分で動かずとも部下を効率良く動かすことで最も的確に仕事をこなせるマネジメントに向いているタイプなのだそうです。耳にすることありますよね?怠け者ほど実は仕事ができるという話を。
2.有能な働き者タイプ
このタイプは働き者であるがゆえに、部下を動かすのではなく何でも率先して自分でこなしてしまうタイプなので、マネジメントよりも上司をサポートするようなアシスタント役として力を発揮するタイプなのだそうです。私が勤めていた会社にもいましたが、残業申請すら出さずに自らが夜遅くまで時間掛けてでも仕事をこなそうとするタイプで、周りの人間を動かすタイプではないわけです。特に私のような“サービス残業”という言葉が大嫌いな人間からすると理解に苦しむタイプとも言えます(笑)
3.無能な怠け者タイプ
このタイプは一見、一番最悪だな・・・と感じるのですが、そうでもないようです。このタイプの人間は自分で頭を使って考えることがないため、判断力も行動力も無いのですが、仕事を与えると何の疑問も持たずに、ただこなそうとする“扱い易い”タイプなのだそうです。ある意味、上司からすると非常に“都合の良い人間”ですよね。基本的に会社(組織)にはこのタイプが一番多いように思いますし、経営者によってはこのタイプを好まれる方も多いのかな・・と個人的には思います。
4.無能な働き者タイプ
このタイプが組織にとって、もっともやっかいな人間で正しい判断力も行動力も無いのに、思い込みでどんどん仕事を進めてしまうことから、気付いた時には取り返しのつかない大失敗をしてしまう可能性を秘めたタイプなのだそうです。確かにいますよね・・確認も取らずに思い込みや感覚だけで進めるタイプ。これ、本人は良かれと思って一生懸命にやってはいるので怒るに怒れない、みたいな人。
このように分けられるらしいのですが、どうですか?
経営者がこれから新たな組織を作る、あるいは今ある組織の再編を考えるにあたり、この“ゼークトの組織論”のように従業員をタイプ分けして考えるのは理にかなっているのではないかと私は思います。何も考えずに同じタイプの人間ばかりを集めて一つの部門やプロジェクトを作ったところで、同じ役割しかできない人間の集まりですから、おそらく上手くいかないはずです。
ちなみに逆の発想でいうと、従業員からの視点で現在の組織を見た場合、直属の上司や役員(出世している人間)はどのタイプが多いですか?これを見れば、その会社の経営者が大体どのタイプを好むのか“傾向”が分かるはずです(笑)
私はこれまでに1社しか務めたことはありませんが、経営者は3回代わっています。ですので、この“傾向”というのは間違いなくあると思っていて、この会社でいうならこの3人の経営者からまんべんなく認められる人間はまずいません。
例えば、前社長の時代には最低の評価であった人間が、社長が代わったことで突然評価が上がり、すぐに役職が上がることなど、ざらにあります。逆にこれまで評価の高かった人間が新しい社長からは毛嫌いされるようになるなんてことも・・・残念ながらあります。つまり、経営者が代わるというのは従業員にとってはチャンスにもなり、ピンチにもなり得るのです(笑)
しかし本来、人間の本質なんてそんな簡単に変わるものじゃないと考えれば、評価する側(経営者)の視点が変わったというだけのことです。
なんでこういったことが起こるのかというと、もちろん経営者も人間ですから三者三様の“好き嫌い”は必ずあるのも理由の一つとしてあるでしょう。ただ、それとは別に今回の“ゼークトの組織論”のような組織作りの骨格となる部分(基準や考え方)が存在しないからだと私は思うのです。
で、この話の結論として私が言いたいことは、まず普通に考えて組織に一番多いタイプは間違いなく無能な怠け者タイプの人間だと思います。それは以前書いたように“日本のサラリーマンは世界で一番仕事のやる気が低い”という調査結果にも証明されているように、“無能”という言い回しには語弊があるものの、いわば自分の意見(意志)を持たない“指示待ち”の人間が多いということです。
当然、経営者からすると使いやすい人間ではあるでしょうが、常にイエスマンばかりだと経営者の考えだけに偏りがちで、ただのワンマン経営に陥ってしまうのではないでしょうか? だとすれば、私はこのタイプから組織の中枢を担うべき人間を選出するべきではないと考えます。長い間、業績が右肩下がりの会社であればなおさら、何の改革すらできず業績など上向くはずもないからです。
つまり、経営者が組織を考えるときに自分が使いやすい人間を選ぶのか、会社に必要な人間を選ぶのかはまったく別物だということです。そして、それこそが経営者としての器やその会社の組織力を測る“指標”となるのではないかと思うのです。
以前のブログでも書いたように、私は自ら“チーム責任者”を降りることを決めたわけですが、この後任がなかなか決まらない期間の話が面白くて、この会社が私の後任として最初に選んだのは当時、役職は主任でこのチームで一番若く組織上、末端の社員でした。しかし、彼はその時点でこの人事を断わったわけです。いきなり末端からチームのトップになれという話はよほど自分に自信が無いと受けないですよね(笑)
で、次に選んだのが役職は課長代理ですが、定年まで残すところ2年というベテラン社員でした。つまり、私を除く“一番若い人間”がダメだったら今度は“一番年配の人間”を会社は選んだわけです。私からすると、まず「順番的に話を持っていくのが逆だろ?」とも思いましたが、今さら私が発言する立場にはありませんし別にどちらがやろうと構わないのですが。
ただ、この人選に意図が見えないというのが私の正直な感想で、こっちがダメならこっちみたいな・・・おそらく、このベテラン社員までもが断わっていたらまた別の社員に話を持っていったはずですので、こういう人事を見ていると私的には「もう、ジャンケンして負けた人間がやったら良いじゃん」と本気で思ってしまいます。
だって、そこに大差は無いわけでしょうから(笑)
私から言わせると、それは組織を作りたいわけじゃなく“組織表”を作りたいだけにしか思えないのです。とにかく誰かしらを早くそのポストに据えないことには組織表が完成しないがために一生懸命、部門長が次から次に違う社員を説得して回るわけです。基本的に誰もやりたがらないので・・・(^^;)
まぁ中小企業であるがゆえに人材が乏しいという事情もあるのでしょうが・・・はたしてそこに“組織論”は存在しますか?
という疑問を持つのも私だけだったのでしょうね(笑)